2009年5月11日にダウンロード開始、27日にCDリリースされた椎名林檎の12枚目のシングル曲
アコースティックを中心とし、富とは一体何か、それを主題とした切ない曲です
序盤よりアコースティックギターとトライアングルをメインに据えた演奏から始まり
その独特な声から切なさ、しかし歌詞には一聴すると前向きさを持っていることがうかがえます
曲の途中までベースが入らず、ドラムもサビまでは入らない構成、曲の重みやリズムを生み出す際に重要なキーカードを途中まで隠しておく手法は、それが入った途端のギャップを生み、曲のインパクトが普段よりも多くあります
エレキも途中まではカッティングによる単発で控え目な役どころでしたが、2回目のサビ終わりとCメロ後の間奏以後重ねて少しづつ盛り上がりを見せ、またサビで落ち着いたあと終盤の聞かせどころとして再度登場します
歌が終わってから余韻に浸る意味で終盤のエコーのかかった演奏がまた刺激的といえます
PVはマンションから屋外へテレビやらベッドやら車やらの贅沢品が投げ飛ばされ
更に途中で爆発するというなんとも衝撃的なもの
そして地面へと降り注ぐ破片は等しく綺麗な結晶となり、皆がモノとして持っている富の結末を表しています
ドラマ『スマイル』の主題歌でもあります
PVに関しては上記の構成であり、メッセージ性が強いのでぜひみてもらいたいです
そして歌詞についてですが、問題性はあまり投げかけずにいきなり結論をにおわすようなフレーズから始まります
「僕らが手にしてる富は見えないよ」つまり人の中にある価値観を真の富としていることが既にちらほらうかがえます
歌詞の構築としては問題定義をした後、それをBメロ、サビを通してゆっくり紐解くというストーリー性がある方が首尾よく理解できそうですが
このようにいきなり曲の結論を言ってしまっているのは敢えてなのか、語るに及ばずといったところか
それとも正解に見えて、もしくは正解であるが現実はそうはいかないことを考えさせるためにさっさとテーマを述べているのか
なんにしろ富は金やモノではなく、人の中にある、という大切なことだからこそ、更にその考えを掘り進んでいく猶予をもらっているような感じです
誰しも富はそちらの方でありたいとは思いますが、ではなぜそれができないのか、そこから真の問題提起が始まると考えると
この曲やはり大きな問題の序章を仄めかしている、あるいはきっかけになるかもしれません
富の考え方が構築したのなら、それをどう現実に切り開いていくのか、それが重要といえます
椎名林檎の鋭い歌声は特長的で歌詞を聴かせる耳にしてくれますし、訴求力もあります
では、それをどう表現するかというと、非常に難しいです
女性ならまだしも、男性がこの音程を出すにはミドルボイスを多用し、裏声はできれば控えたいところ
表現としては「僕」及び「君」と「彼ら」の状況がわかり、思い浮かぶようにしたいです
彼らは富をカネやモノとしており、僕や君は富を人の中、価値観としている
それを僕と彼らでしっかりと対比し、考え得る富をしっかりと比てもらえるようにしたいです
「彼ら」と言っている点から視点は「僕」
「僕」が考える富についての主張をリスナーと共感できるよう、歌というよりは役に徹したいところです
そうして「僕」に扮することができれば、この曲の曲らしさを少しは出すことができるかもしれませんが
個人的にはこれは問題提起であり、ではその富の考えを社会に浸透、または再認識してもらうにはどうするか
そういった点も踏まえ、あまりこの曲で解決だ、というハッピーエンドさを出し切らないようにもしたいです
まぁそれ自体は曲の終局の演奏である程度見出されているかもしれません
本当の意図はなんともいえませんが
富とは何か、それを考えさせるこの曲
メッセージ性の強いPVと合わせて是非聴きたいです
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